食文化・思い出の一冊

食文化の東四柳です。
本日、小林カツ代さんの訃報が伝えられました。
大好きな料理研究家さんだっただけに、正直とてもショックな気持ちです。
『小林カツ代のケーキ&パイの基本』私が高校時代から愛用している料理書です。



 
この料理書に紹介されているレシピは、どれも手軽で、甘さもほどよく、
いっしょに食べる人が皆笑顔になれる、そんなお菓子がたくさん紹介されています。
横目でレシピをみながら、不器用ながらも調理をしていると・・

軽やかな文体から、「ここはこうすると、ラクなのよねっ」といったような、
明るいカツ代さんの声がどこからともなく聞こえるような気もして・・。
いつもオーブンで焼きあがる瞬間を待ち遠しく感じたものでした。

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だから私は、自分で焼くケーキはやさしい味でありたいの。ついほほえんでしまう味でありたいの。
少しくらいボコボコしていても、形がビシッときれいでなくても、
「わァおいしそう!」と思う形ってあるでしょう。あったか~い気持ちになるような。

楽しいことがあるときも、ちょっとつらいことがあるときも、ケーキを焼いてみましょうよ。
つらいことなら半分にしてくれる力が自分で作るケーキにはあるんです。

(『小林カツ代のケーキ&パイの基本』より)

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カツ代さんの書棚には、戦前の料理書や料理雑誌のコレクションがあって、
それを眺める時間を、とても大切にしていたというお話をお聞きしたことがあります。
今の時代の料理だけでなく、いろんな時代の料理を研究されていたカツ代さん。

カツ代さんのレシピが、世代を超えた多くの方に愛されている意味が、
今改めてわかるような気がいたします。
料理を追求する楽しさを教えてくれたカツ代さん。
カツ代さんのあたたかなレシピが、次の時代にも受け継がれていくことを願うばかりです。

最後になりましたが、改めて小林カツ代さんのご冥福をお祈り申し上げます。
カツ代さん、たくさんの素敵なレシピを、ありがとうございました。