時代劇の小道具づくり 鍛金や彫金に興味のある学生へ

情報メディア学科の山口です!先日、ディズニーさんの真田広之さん主演の時代劇「SHOGUN 将軍」がエミー賞を受賞しましたね!日本の文化が海外から注目されるというのはとても誇らしくうれしい事です。そういえば以前、映画のお手伝いに来てもらった学生から、衣装や小道具にちょっと興味がありますと言われたので、金属を叩いて小道具を作る鍛金の方法を少し解説しました。その模様をせっかくなのでこちらのブログにもアップしたいと思います!

映像で使う鎧兜などの衣装や小道具では、軽さや安全性が問われるので樹脂をよく使いますが、リアリティを追求するために、1ミリ以下の鉄板やアルミの板などを使って本物同様、鍛金や彫金で作られることもあります。そのための道具がこちら。金槌やプラ槌、金属を彫る鏨(タガネ)、切るためのハサミ、打ち付けるための金床(鉄製と木製)あとは鑢(ヤスリ)などを使います。

まずは鉄板をチョキチョキ切っていきます。硬くて切り口が鋭利なので手袋をしましょう。

切り出したら穴をあける所をまずは凹ませて、その後ドリルで穴を開けます。

準備が整ったら、大まかに全体の形を作っていくわけですが、形によって手順が毎回変わります。こればかりは慣れが必要です。たいていの場合、伸ばしたくない部分は端から打って行き、伸ばして膨らませたい部分は真ん中から全体に向けて打って行きます。そうすると、思ったように膨らませたり、へこませたりできるようになります。兜を短期間で作るために、以下は鉄からアルミ材に置き換えて作った場合の方法で進めていってみます。

当て金にハンマーでがんがん打っていくイメージがあると思いますが、実際には小刻みに力加減をその都度調整して打っていきます。曲がり具合などをよく観察して、打つ角度や位置を決めながら進めます。金属の板は結構繊細で、叩きすぎても良くないし、これも慣れが必要ですのでどんどん数をこなしていきましょう。アルミでも手を切ることがあるので気を付けてくださいね。

形が出来たら、前後左右からおかしな曲がりはないか等よく観察して叩いて絞ったり膨らませたりしながら成型していきます。

鉄片を廟で留めながら、形が出来上がってきました。今回は女子にも優しいアルミで制作しましたが鉄地に見せないといけないので、それらしく塗装をしていきます。本来は漆を塗り重ねますが、これも時間がかかるので今回はウレタンの二液タイプで漆っぽく塗ってみます。アルミは塗装が密着しづらいため下地にプライマーを塗り、垂れないように塗っていきます。

漆風仕上げならここで終わりですが、鉄地に見せるためこれを鑢掛けし、ここから鉄っぽく塗装します。

今回はこんな感じで完成しました。西洋と東洋の技術が混ざったようなデザインとし、高山飛騨守(高山右近のパパ)の兜をイメージして作ったので、耳の所に家紋を入れようか迷いましたが、とりあえずこれにて完成ということで、映画で使われるときに加工して家紋を入れようと思います。

今回のような兜はそこそこ時間がかかりますが、他にもおでこを守る額当てなどは比較的簡単なのでどんどん挑戦すると良いと思います。

僕自身、金属加工は専門外なのでたまにしか行いませんが、鍛金などは、弥生時代に伝わってから日本独自の発展を遂げた工芸技術だそうなので、もっと本格的にやってみたいですね。修行がまだまだ足りませんがここまでなら比較的すぐ覚えられると思います。

ちなみに表現塾では普段もこんな話から、実際に作るところまでを行ったり、途中で休んではご飯会を行ったりしてますので、興味のある学生は是非訪ねてくださいね。