前期定期試験を振り返って(管理栄養学科 寺井岳三)

管理栄養学科の1年生は「解剖生理学」でからだの仕組みの基本を学び、2年生はその知識をもとに「疾病の成り立ち」でいろいろな病気について深く学びます。1年生2年生の前期定期試験の中で正解率が最も低かった問題を解説します。学生の皆さんは試験のことはすっかり忘れて夏休みを満喫している最中と思いますが、少しお付き合いください。

 

2年生「疾病の成り立ちⅠ」の[問題B-10]

先天性代謝異常についての記述である。

メープルシロップ尿症はアミノ酸の代謝異常が原因の常染色体劣性遺伝疾患であり、治療を施さなければ麻痺、発育障害、知的障害をきたして死に至る。尿や汗からは特有のメープルシロップのような甘い臭いがするのでこの病名がついている。以下の記述で正しいのはどれか。1つ選べ。

1 芳香族アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンから生成されるα-ケト酸を代謝する脱水素酵素の活性が低下するために生じる

2 血中のバリン、ロイシン、イソロイシン濃度が低下する

3 新生児にはバリン、ロイシン、イソロイシンの摂取を制限する

4 バリン、ロイシン、イソロイシンは非必須アミノ酸である

5 眼にカイザー・フライシャー角膜輪が見られる

 

[正解] 1を選んだ学生は28%、2を選んだ学生は28%、3を選んだ学生は33%、4を選んだ学生は5%、5を選んだ学生は5%でした。正解は3です。

 

[解説]国試では、「メープルシロップ尿症は、芳香族アミノ酸の代謝異常症である。」といった選択肢で問われています。バリン、ロイシン、イソロイシンは分岐鎖アミノ酸なので、芳香族アミノ酸は間違いです。

問題文にはhttp://dietitian.blog68.fc2.com/blog-date-200607.htmlで見つけたイラストをいれておきました。BCAAはBranched-chain amino acidsの略で、分岐鎖アミノ酸です。ヒントだったのですが…

なお、分岐鎖アミノ酸の覚え方は「分刻みのロイター通信いっそバリへ」が私のおすすめです。

ふんき→分岐鎖

ろい→ロイシン

いっそ→イソロイシン

バリ→バリン

メープルシロップ尿症は、分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)の代謝異常なのでこれらの血中濃度は上昇します。したがって新生児では摂取制限が必要です。

バリン、ロイシン、イソロイシンは必須アミノ酸です。アミノ酸20種類の中で必須アミノ酸は9種類です。必須アミノ酸の覚え方は「風呂場椅子独り占め」が私のおすすめです。

ふ→フェニルアラニン

ろ→ロイシン

ば→バリン

い→イソロイシン

す→スレオニン

ひ→ヒスチジン

と→トリプトファン

りじ→リジン(今はリシンとよぶようです)

め→メチオニン

選択肢5のカイザー・フライシャー角膜輪とは、銅の代謝異常症であるウィルソン病で銅が眼に蓄積すると見られます。ウィルソン病が銅の代謝異常症であることも国試で問われるので合わせて覚えておきましょう。

 

学生の皆さん、夏休みを有意義に! 後期の講義でお待ちしています。