解剖生理学Ⅱ試験解説

1年生の解剖生理学を担当している寺井です。寒い日が続きインフルエンザも流行中ですが、1年生は欠席者なく後期の解剖生理学Ⅱの定期試験が無事終わりました。全員が合格点を取れてよかったです(^O^)

前期と同様、後期も正解率が低い問題がいくつかありましたのでこっそり紹介します。国家試験の問題を参考にして、文章には詳細な解説をつけ加えて問題を作成したのですが…

 

(1)  正解率21%

自律神経系は、機能的に拮抗する交感神経系と副交感神経系から成り、中枢神経から支配する器官に到達するまでの間に神経細胞(ニューロン)の中継点である自律神経節が存在する。自律神経節に至る節前ニューロンの軸索は節前線維、自律神経節にある節後ニューロンの軸索は節後線維という。交感神経の中枢は胸髄・腰髄に、副交感神経の中枢は脳幹から出る一部の脳神経の神経核と仙髄に存在する。

四肢の運動を制御する神経路は大脳皮質に起始して脊髄に達し(皮質脊髄路)、運動神経は脊髄の前根から出て筋の神経筋接合部に至る。図には中枢神経からでる交感神経、副交感神経、運動神経を示しているが、これらの神経でノルアドレナリンが神経伝達物質である部位はどれか。1つ選べ。

1 ア

2 イ

3 ウ

4 エ

5 オ

 

解説

1(ア)を選んだ学生が26%、2(イ)を選んだ学生が10%、3(ウ)を選んだ学生が31%、4(エ)を選んだ学生が20%、5(オ)を選んだ学生が13%とばらつきましたが、正解は4(エ)ですね。

交感神経節前線維、副交感神経節前線維・節後線維、運動神経の神経筋接合部の神経伝達物質はすべてアセチルコリンです。ノルアドレナリンが神経伝達物質である部位は交感神経の節後線維のみです。これを理解していれば、あとは図で交感神経の節後線維を選ぶ問題です。

図では中枢神経から心臓に到る神経は2本ありますが、どちらが交感神経でしょうか?延髄からアの自律神経節を経由してイに到る神経は副交感神経(迷走神経)、胸髄からウの自律神経節を経由してエに到る神経が交感神経です。本文をよく読めば正解に近づいたのですが…難しかったかな。

 

 

(2)  正解率31%

腎動脈を流れる血漿は、腎臓で糸球体からボーマン嚢内に濾過され、原尿となる。この原尿が尿細管などを通過する間に有用な成分は毛細血管に再吸収され、毛細血管中の老廃物は分泌される。健康なヒトの腎の構造と機能に関する記述で、正しいのはどれか。1つ選べ。

 

1 赤血球は糸球体で濾過される

2 ブドウ糖は糸球体で濾過される

3 タンパク質は糸球体で濾過される

4 原尿の10%が、尿として体外へ排出される

5 糸球体を流れる血液は静脈血である

 

解説

正解の2を選んだ学生は31%、3を選んだ学生は28%でした。

糸球体に流入する血液は動脈血ですね。糸球体の血管を流れる血漿量RPFは500ml/分、20%が濾過されるので糸球体濾過量GFRは100ml/分、この原尿の99%が再吸収されて残り1%が尿です(1.5L/日)。赤血球などの血球成分は濾過されないとして、ブドウ糖とタンパク質はどうでしょう?タンパク質は分子が大きいので濾過されません。ブドウ糖は小さいのでいったん濾過されてすべて再吸収されます。尿には糖が含まれませんが、糖尿病患者で血糖が高いと濾過されるブドウ糖が多くて再吸収処理が追いつかずに尿に糖がでてきます。

 

2年生では、1年生で学んだ解剖生理学の知識をもとに「疾病の成り立ち」の講義が始まります。糖尿病など栄養に関わりのある疾病についても詳しく学びます。