食文化学科
2019.08.27
北海道・東北の旅
こんにちは、関野です。
夏休み、いかがお過ごしですか。
私は東北海道と青森を車でグルット回り、お目当ての場所を訪れました。
1)北海道
① 襟裳岬(えりもみさき)
襟裳岬は日高山脈の最南端に位置します。
写真は襟裳岬の砂漠化で緑化工法の作業を行っている昔の写真です。
かつては天然林が広がり、この岬周辺は西からの暖流と東からの寒流で多様な魚介類、海藻などが生息していました。しかし、人為的な伐採のため砂漠化が広がり魚は獲れなくなりました。
そこで草の種子をまいた後、種子の乾燥防止と種子が飛ばされるのを防ぐため、商品価値のない海藻で覆い緑化を進めるエリモ式緑化工法を行いました。今は緑が広がっていますが風が強いため、今もこの緑化が継続され魚介類や海藻類の生息・生育が続いています。
車を走らせていると、昆布を獲っている漁師をたくさん見ました。風が強く吹き、昆布が流れてきます。
ここは日高昆布の里、日高昆布は柔らかく、煮えやすく美味しいので用途が広い万能昆布。
昆布は北海道沿岸と宮城県以北の三陸海岸に分布し寒流の親潮海域に生息する海藻で大きな藻場を作り多様な生態系を保持する働きがあります。
② 知床半島
2005年世界自然遺産に指定された知床。
いつもはガイド付きで五湖の周りを散策できますが、今日はヒグマが長溜しているため木道しかあるくことができませんでした。
帰りの道路沿いで草を噛んでいるヒグマに遭遇しました。ヒグマは雑食です。車から出てはいけません。ここは「bear country」。
世界には8種のクマ、日本には北海道のヒグマと本州のツキノワグマの2種がいます。北海道には55%の地域、本州は45%の地域にクマが生息し、日本国土の半分にクマが生息していることになるそうです。ヒグマの生息数は10,600頭±6,700頭と推定されています。
何年か前、茨木市でもクマにご注意くださいとのニュースがありました。
③ 網走市
写真は博物館網走監獄正門。
1983年に開館した博物館網走監獄は、旧網走刑務所の歴史的建物25棟を保存展示する、野外博物館。
北海道の集治監(しゅうじかん:明治時代に設置された囚人の収容施設)は、北海道開拓に重要な役割を担いました。私たちは北海道開拓と言えば屯田兵、入植団をイメージしますが、実際は開拓の礎を築いたのは囚人労働でした。
明治時代の初め、ロシア帝国の南下政策に備えるため、開拓を急ぐ必要がありました。国内では士族の反乱などから多数の政治犯、思想犯が収監されていて、この囚人たちの労働力を使うことが考え出され、網走監獄が1890年に開設されました。1200人の囚人が、網走から旭川までの163kmの中央道路幹線を8カ月で完成させました。これら過酷な労働と寒さの中、多くの死者を出しました。
網走監獄は、広大な土地に永久的に監獄を存続させる政府の意図があったので、他の監獄より整備された建築物がそろっています(パンフレットより)。掲げられた資料を読むうちに、これらの事実をもっと世の中に広める必要があると思いました。
高倉健の網走番外地シリーズなどで網走刑務所は一大観光地になりました。
写真は監獄定食。
現在、網走刑務所の受刑者が食べている米7割、麦3割のご飯に、味噌汁、焼き魚、副菜がセット。昔は64飯と言って米6割、麦4割。焼き魚はホッケで、副菜は写真左下のラワンブキと薄アゲの煮物と長いものおかか掛け。昼食は600キロカロリーと決まっています。
ラワンブキはアイヌの伝説コロポックルが雨傘の代わりに、これをカサにしたほど日本一巨大なフキ。北海道足寄町(あしょろ)町の特産品で自生、栽培と両方あり高さは3mほどになります。
ラワンとは足寄町の東にある螺湾(ラワン)地区からきています。収穫時期は6月で茎は柔らかく薄アゲとの煮物に向いています。歯ごたえがシャキシャキで美味しかったです。
長いもは北海道と青森県で全国7割以上のシェア、ナンバー1。秋と春に収穫し低温貯蔵で1年を通して販売しています。長いもにはデンプン分解酵素が多量にありデンプンを生でおいしく食べることができます。台湾では十勝の長いもが大人気でたくさんの長いもを輸出しているそうです。
④ 十勝市
十勝がロケ地の今放送中の朝ドラ「なつぞら」の柴田家です。
道路沿いにあり観光客がたくさん立ち寄っていました。
⑤ 帯広市
帯広にあるビート資料館に行きました。
ビートの栽培は1871(明治4)年に試作がはじまりましたが上手くいかず、1920(大正9)年に再挑戦で耐冷作物として全道に普及しました。
写真手前の大根のようなものがビートで甜菜(てんさい:別名さとう大根)とも呼ぶ。砂糖の原料はビートとサトウキビで、前者はヨーロッパ・北米など冷涼地、後者はアジア・中南米など亜熱帯・熱帯地域で栽培。日本ではビートは北海道、サトウキビは鹿児島県、沖縄県で栽培です。
ビート畑です。ほうれん草と同じヒユ科なのでほうれん草のように見えます。ビートは北海道農業の主産物で大きな葉で光合成を行い、根部に糖分を蓄積します。根部の糖分を絞った後の粕は牛の飼料、大きな葉は畑の緑肥としてすき込みます。残念ながらほうれん草のような葉を食べることは硬くてできないそうです。
捨てるところのないビートは、環境にやさしい作物です。日本の砂糖の40%がビート糖でやわらかい上品な甘さが特徴だそうです。ヨーロッパのお菓子の砂糖はビート糖を使用しています。
また、ビートは驚異の栽培作物と言われています。それは10アール当たり700~1,000kgの砂糖が取れるからです、すごいですネ。
お米は10アール当たり豊作で600kgぐらいです(パンフレットより)。
⑥ 新千歳空港
国内初の空港内ロイズチョコレート工場です。
ロイズは、北海道の地で本場ヨーロッパに負けないチョコレートを作りたいと、1983年に札幌で創業しました。2011年にロイズチョコレートワールドが新千歳空港に作られ、チョコレートミュジアム、ファクトリー、ショップ、ベーカリーがあります。
2)青森県
① 津軽平野田舎館村
田舎館村(いなかだてむら)は青森県津軽平野に位置し稲文化の村、田んぼアートの発祥地です。
今年は27回目でテーマは「おしん」、アジアの観光客を意識し、このテーマにしたそうです。
使われている稲は黄、紫、緑は村で栽培されていた古代米、白、赤、オレンジは青森県産業技術センターで開発された品種です。
このアートのすべての絵の具は稲で、素晴らしいです。人口8,000人の村に毎年見物客が20万人ほどくるそうです。毎年設計図を描き個々の色の稲を植え、無事育つかいつもハラハラだそうです。
② 下北半島 佐井村
佐井村は、江戸時代に北前船との交易が盛んな寄港地でした。下北半島はヒバの一大産地で青森ヒバと呼ばれ、殺菌力・耐湿性に優れ、建材として高値で取引されています。
ヒバは秋田杉・木曽ヒノキの三大美林の一つ。佐井村はヒバ材の積出港として栄えました。祇園祭の流れをくむ箭根森(やのねもり)八幡宮例大祭は、1696(元禄9)年から続く文化で村の繁栄の礎となったそうです。今も北前船シンポジウム、イベントなど盛りだくさんです。
③ 下北半島 大間
大間は下北半島の先端に位置し、本州最北端の自治体。
写真のマグロは1994年に水揚げされた440kgの超大物のマグロ。大間のマグロはクロマグロ(本マグロ)で黒ダイヤとも呼ばれます。
大間のマグロが有名になったのは、2000年NHKが大間のマグロ漁師の娘を主人公にした朝ドラ「私の夏空」が放送されたからです。今は、大間までマグロを食べにくる観光客が多い。ここ大間も北前船の寄港地で、文化などは北回り航路の影響が濃くあるそうです。
マグロ三昧丼です。手前から大トロ、中トロ、赤身です。トロの美味しさは当然ですが赤身も口の中に入れるとス~ト溶ける感じでした。
④ 下北半島 恐山
恐山は高野山、比叡山と共に日本三大霊場の一つ、天台宗の慈覚大師が862年に開山しました。
荒涼とした風景が広がり、温泉が湧きだしているため、硫黄の臭いがたちこめ霊場にふさわしい雰囲気です。
総門の手前に六体の大きな地蔵様が座り、迫力があります。地蔵はいつも六体で置かれています。それは仏教には六道輪廻(りんね)の考え方があるからだそうです。地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道が六道です。
地蔵は六道それぞれを駆け回り、すべての存在を救うと言う意味で6体いつもそろっているそうです。大雨で総門の奥、大師堂まで行くことができませんでしたが、再挑戦をしたい。
まだ夏休みが続きます、いろいろな事をして楽しんでください。
後期に皆さんと会えるのを楽しみにしています。